2025.10.20

「AIが最初の叩き台を作ってくれる」──知財部主導の発明創出を支えた発明抽出AI活用の裏側

属性:企業技術分野:機械、化学従業員数:500〜700名

課題

  • 技術者への出願ノルマによって負担が増大し、モチベーションが低下
  • ノルマ制廃止後は発明提案数が減少し、知財部主導での創出体制が必要に
  • 限られたリソースで多くの案件を効率的に発掘・整理する仕組みが求められた

解決策

  • 発明抽出AI「appia-engine」を導入し、技術資料から自動で複数の出願点を生成
  • AIが叩き台を提示することで、議論の出発点を明確化し、心理的ハードルを低減
  • 技術部門との会議でAIの提案を活用し、発明の方向性を効率的に検討

効果

  • 発明提案書の承認数が増加し、提案のしやすさが向上
  • 検討の質が高まり、異なる観点からの出願が増加
  • 会議の生産性向上とともに、知財部全体の創出力が底上げされた

技術者の負担を減らすために、知財部が主導する体制へ

もともと、明細書作成や中間対応は技術者が主体で行っていました。 ところが、出願数に関するノルマが課されていた時期には、技術者への負担が大きく、やがてそのモチベーションは低下。ノルマ制を廃止した後は、「発明提案が出てこない」という新たな課題が浮かび上がりました。 そこで知財部は方針を転換。発明の抽出から明細書作成までを自ら主導する体制に切り替えました。 しかし、社内の限られたリソースだけで多くの案件をこなすのは容易ではありません。 「どうすれば効率的に、そして多様な切り口から発明を掘り起こせるか」──そんな模索の中で、発明抽出AIの導入が検討されることになります。

「どんな資料でも叩き台を作ってくれる」AIとの出会い

導入の決め手となったのは、appia-engineの発明抽出AIの機能。AIが生成する“発明の叩き台”の精度と柔軟性でした。 「このツールは、クローズドな環境でどんな形式の資料を入れても、複数の出願点を提案してくれる点が非常に有用です。」 AIが最初の原案を提示することで、議論の取っかかりが明確になり、検討のスピードも向上。 特に、経験の浅い技術者にとっては「ゼロから考えなければならない」負担が減り、心理的ハードルが大きく下がったといいます。

「人間同士だと、最初の案に対してどうしても厳しい指摘が飛び交います。AIが作った叩き台なら、まずは“ベースとして議論しよう”という空気になる。若手の技術者の負担も減らすことができる点も良いと思っています。」

会議の質が変わり、発明提案数も増加

現在では、技術部門との会議の中でAIの提案結果を共有し、その内容を基に議論を行うのが定着しています。 AIが生み出した複数の出願点を起点に話し合うことで、発明の方向性がより具体的になり、最終的に承認される提案書の数も増加。

「以前よりも、提案が“しやすくなった”という声が多いですね。AIが異なる視点を提示してくれるおかげで、見落としていた切り口や進歩性の確保が難しいポイントにも気づけるようになりました。」
会議の生産性が上がるとともに、知財部全体としての生産性も底上げされつつあります。

今後の展望:図面生成など、次のステップへ

今後は、より具体的な明細書作成支援へとAI活用の幅を広げる予定です。 特に、部品点数の多い構造物などの図面を自動生成したり、符号一覧を自動付与したりする機能への期待が高まっています。

「AIが叩き台を作ることで、人はより創造的な部分に集中できる。その環境をどう整えていくかが、次のテーマです。」
AIが「書く」ことで、人が「考える」時間を増やす。 発明創出の現場では、そんな新しいバランスが生まれ始めています。