「AIを使える人だけが効率化する状態から、組織全体の底上げへ」
実施形態の作成工数を約4割削減。安定したAI活用で、知財業務の生産性を向上

中島 千尋 様(特許技術部部長・弁理士)、竹野 直之 様
課題
- 明細書作成に時間を取られ、本来注力したい発明発掘・言語化に集中できていなかった
- 業務効率化への意識はあったが、決定打となる手法が見つかっていなかった
解決策
- appia-engineを導入し、実施形態の作成やクレームの壁打ちなどにAIを活用
- AIによる安定した出力をベースに、担当者のスキルに依存しない業務プロセスを構築
- 案件情報を一元管理し、過去案件の参照・共有を効率化
効果
- 実施形態の作成工数を約4割削減
- AIによる生成・整理によって、頭を使う必要のない作業負担を軽減
- AI活用の属人性を抑え、組織全体の生産性を底上げ
AIは使っていた。それでも、担当者によって結果が違っていた
appia-engine導入以前は、Google Drive上で案件を管理し、コメント機能などを使ってメンバー間でやり取りを行っていました。 明細書の編集時にはGoogleドキュメントをWord形式でダウンロードし、編集後にファイルを複製してバージョンを管理するという運用です。古いファイルを誤って使用しないよう、「Old」フォルダを作って過去のバージョンを避けるなど、アナログな管理も残っていました。 一方で、AIについてはすでに業務への導入が進んでいました。 入力した情報が学習に利用されないことを条件に汎用LLMを活用し、明細書作成などの業務を効率化していました。 しかし、そこには新たな課題もありました。
「汎用LLMは自由度が高い分、使う人によって出力のボリュームや品質にばらつきがありました。プロンプトをうまく使える人が中心になってしまう部分もあり、組織全体の底上げという意味では課題がありました。」AIを導入すれば、それだけで組織全体の生産性が上がるわけではありません。 AIを「どう使うか」というスキルそのものが、担当者の個人差になっていたのです。
「安定して出力される」ことが、組織で使う上で大きかった
appia-engineの導入を検討する中で、特に評価されたのがAIの出力の安定性でした。 汎用LLMのように自由度が高いAIでは、入力やプロンプトによって結果が変わることがあります。一方、appia-engineは特許明細書作成に必要な情報を前提として設計されているため、一定の品質・ボリュームで出力されます。
「appia-engineは、出力のボリュームや品質が安定しているところが良いと感じています。担当者によって結果が大きく変わりにくいので、チームで使いやすいです。」汎用LLMを使っていた際に感じていた、修正の途中で内容に矛盾が生じたり、事実と異なる内容が生成されたりするケースも少なく、安定して使える点が評価されています。
AIに「細かく指示する」から、全体を見て「ざっくり指示する」へ
現在、appia-engineは主に実施形態の作成に活用されています。 一方、クレームや背景技術、発明提案書などは、精度を確保するために人が作成する場面も多くあります。その中で特徴的なのが、AIを「壁打ち相手」として使う活用方法です。
「クレームについて考えるときに、appia-engineに壁打ちをしてもらっています。自分では考えていなかった上位概念に整理してくれたり、論理的な理由付けを出してくれたりするので、考えを整理するのに役立ちます」AIにすべてを任せるのではなく、人が考えるべき部分とAIに任せる部分を切り分ける。 その結果、これまで細かな作業に費やしていた時間を減らし、より全体を見ながら業務を進められるようになりました。
「以前よりも、細かいところまでAIに指示する必要がなくなりました。全体を見て、ざっくりと指示を出すだけで作業を進められるのは大きいです」
約4割の工数削減。AI活用の効果を組織全体へ
実際の効果として、実施形態の作成を中心に約4割の工数削減を実感しています。 AIによって作業そのものが減っただけでなく、「頭を使わなくてもよい作業」をAIに任せられるようになったことが大きな変化です。 一方で、AIが生成したドラフトを他の担当者がチェックする工程には、現在も一定の工数がかかっています。AIによる生成が進んだからこそ、今後はレビューやチェックのプロセスも含めて、業務全体を変えていく必要がありますが、それでも、AI導入前と比べた生産性の変化は明確、少なくとも1.5倍くらいは効率化できていると思います。 さらに、案件情報が一元化されたことで、過去の案件を参照・共有しやすくなったことも大きなメリットです。 これまでファイルを探していた時間が減り、過去の検討内容を確認しながら業務を進められるようになりました。
AIを「使える人のもの」から「組織の仕組み」へ
今回の取り組みで大きいのは、単純な作業時間の削減だけではありません。 これまでAIを使いこなすには、プロンプトを工夫したり、出力結果を見ながら何度も指示を出したりするスキルが必要でした。 appia-engineでは、特許業務に適した形でAIを利用できるため、個人が高度なプロンプトを作成・管理する必要がありません。 AIを使いこなせる人だけが効率化するのではなく、チーム全体でAIの恩恵を受けられる環境へと変わりつつあります。
AI活用の次のステージへ
appia-engineの導入によって、AIを使える人だけが効率化する状態から、チーム全体でAIを活用し、生産性を底上げする環境へと変わりつつあります。 約4割の工数削減に加え、過去案件の参照や共有も容易になり、特許業務の進め方そのものが変化しています。 AIを「使いこなす」のではなく、AIを業務の中に自然に組み込む。 その先にあるのは、個人のスキルに依存しない、組織としての圧倒的な生産性向上です。
AI活用を、個人のスキルから組織の生産性へ
今後、さらに期待されているのが、編集者とレビュアーのやり取りをappia-engine上で完結できる環境です。 現在は、appia-engineで素案を作成した後、Wordに出力して編集する工程があります。 「AIで作ったものを、そのままレビューまで含めて一つの場所で完結できると、さらに使いやすくなると思います」 AIによる生成だけでなく、その後の編集・レビューまで一連の業務としてつながれば、AI活用による生産性向上はさらに大きくなります。